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ろくがつ
六月
相馬 泰三
「早稲田文学」1913(大正2)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页
これでたくさんだ。……何という幸福でありましょう。……」
こんなことを叫び続けていた。そして最後に彼は曽根の肩に両手を掛けて、曽根にも一日も早く社をやめるように勧めた。
「……先輩、後輩、関係、背景、そして紹介状、……むこうに行ってはすべり、こっちへ来ては転び、……曰く何系、曰く何団体、曰く何派、曰く何、……まるで簇生植物のようだ。うじょうじょとかたまっていなければ生きて行かれないような、そんな意気地のない権威のない生活が何になるのだ。……そういう世界から一日も早く卒業しなければだめだ」
それはまるで人を鞭打つような調子であった。
二人がそこを出たのは、もう大分遅かった。街には全く人通りが絶えていた。空は高く晴れ、数限りもない星がチラチラと瞬き、ちょうど頭の上に十八九日ごろの月が、紙片でも懸けたように不愛相に照っていた。二個の酔漢はよろよろと互いに相もたれ合うようにしてその下を当てもなくさまよい歩いた。
数日の後、曽根は松本から一通の封書を受け取った。信州軽井沢よりとしてある。それには次のようなことが書いてあった。
「昨日、飄然この地へ来た。
僕がここへ来たことはむろん、宿の者にも誰にも知らせない。