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きょうどうこうさく

共同耕作

宮本 百合子

「改造」改造社、1931(昭和6)年9・10月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,078 字 · 7 页

青空文庫

裏のくぬぎ林のあっちをゴーゴーと二番の上りが通った。

とめはいそいで自分のたべた飯茶碗を流しの小桶の中へつけると、野良着へ手拭をしっかりかぶって、土間から自転車をひき出した。

「もう行くか」

「ああ」

炉ぶちのむしろから、年はそうよってないのに腰のかがんだ親父の市次が立って来て、心配そうに云った。

「――めったと皆の衆の前さ、目え立つようなところさツン出るでねえゾ、ええか!」

市次は組合へ入ってる癖に引こみ思案で、小作争議の応援になんぞにはどうしても出たがらない。俺ア年だで、皆の衆やってくんろと尻ごみするのだ。マンノーをくくりつけた自転車を往還まで押し出すと、とめはペダルへ片足かけヒラリと身軽くとびのった。

鶏がびっくりして、コッコッコッとわきの草むらへかけ込む。朝の早い野良道をずっとずっと遠くなっても、自転車にのって行く元気なとめの、赤い前垂の紐の色が見えた。

×元村の深田と云えば、有名な強慾地主だ。去年の夏、明治二十何年とかに入れた証文に物を云わせ、小作の権太郎の家の大けやきを伐らせちまったのも深田だ。権太郎の息子が組合員だし働きものでしっかりしている。