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ふゆのやま

冬の山

木暮 理太郎

「旅」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,733 字 · 8 页

青空文庫

曾て奥上州の山名を確めたいという希望から、暮の二十八日に赤城山へ登ったのであるが、其日の夕方から降り出した雪は、山では大吹雪となって、二日三晩というもの小止みもなく降り続け、風呂場で体にかけた湯が流し板の上で直ぐ氷るという寒さ、展望どころか一歩も外出することが出来ず、三十一日の朝になって漸く霽れ上ったものの、この日はもう帰京しなければならない。身仕度して午前十時に家を出た。近い鳥居峠までも楽ではなかったが、峠から一歩下りに向うと、吹溜りの斜面は六、七尺という雪量なので、僅か半里に足らぬ下り坂に三時間を費してしまった。此時は足拵えがよかった為めに凍傷にも罹らずに済んだが、一月の中旬、金峰山麓の増富鉱泉から、木賊峠を踰えて黒平へ出た時の旅では、何等の用意もしないで、三日の間二尺に余る積雪中を辿り歩いた報いは覿面で、今だに痕が寒さに痛む程の凍傷を受けた。秩父の雁坂峠や十文字峠なども雪崩の危険はないにしても、此頃通過を企てるのは少し無理である。

三月から四月になると、雪の表面は可なり堅く締って、容易に落ち込まなくなる、高い山であると雪崩の危険に脅され勝ちであるが、二千米程度の山ならば、其心配も殆ど無い。