轻松读懂日语经典作品
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こおるアラベスク
凍るアラベスク
妹尾 アキ夫
「新青年」博文館、1928(昭和3)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,278 字 · 20 页
三人はデスクの抽斗を一つ一つ開けて、その中から他処から来た手紙や雑多な書類を取り出して調べてみたが、銀三の行方を推量すべき手掛りになるものは何もなかった。本棚には英独の書物が一杯につまっていたが、それがまるで氷に関する文学と科学の書物であったことは云うまでもない。
本棚を調べ終ると、警部は短かく刈った口髭のあたりを右手でつつきながら、
「もう部屋はこの他にはありませんか?」
「はあ、事務室と工場と、女中部屋と台所と浴場と、それからこの部屋と、みんな御覧に入れました」
すると警部が怪訝らしい顔をして、低い、重みのある声で「それァ、おかしい!」と云った。
いままで始終、快活な微笑を浮かべていた暮松は、急に真顔になって、警部の半ば禿げかかった広い額と、やや陰鬱な、威厳のある眼をじろじろ見入った。
「なぜです?」
だが、警部はこの問には答えないで、黙ったまま考えていたが、やがて第二の質問を発した。
「この家には、今はどこにも電燈がついていないでしょう?」
「昼は電燈を点けません」
「電線から来る電力は、どこにも使ってないのですね?」
と云って警部は念を押すように暮松の顔を見た。