轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はつつぼみ
初蕾
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,525 字 · 35 页
半之助のぐいぐいと高まってゆく感情には、とうていお民は付いてゆけなかった。はやくからそういう世界にいて、好いて飽かれた、契る別れるなどの、単純なうれしさ悲しさは、見もし自分で味わいもしたが、人間を侮辱するとか、厳粛な機縁とか、この際になって「本当に愛していた」などと云われることには馴れていなかった。彼女にはただ男がにわかに自分から離れて、別の世界の人になってしまったように思え、――とうとう泣くときが来た、という悲しさのなかで息をひそめるばかりだった。
「男なんて子供みたいなものだ」
半之助を送りだしてから、すっかり更けた冷える夜具の中で、お民は独りこう呟いた。
「これから江戸へいって人間らしくなる、なん年かかるか、人間らしくなって帰れるかどうかもわからない、けれどいつか帰ったら嫁になって呉れなんて、……女がこんな境涯にいて、それまでまちがいもなしに待っていられると思うのかしら、どうして食べてゆくと思うんだろう」
もう逢えないという悲しさのなかで、お民は泣き笑いをするように男の単純さを嗤った。その日その日の生活に追われ、食う、着る、寝るの苦労を骨身で味わってきたお民には、それ以上の考え方はなかったのである。