轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わかれのじ
別れの辞
豊島 与志雄
「中央公論」1935(昭和10)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,330 字 · 37 页
普通なら冗談として取るに足りない言葉だっただけに、打撃が大きかったのだろう。彼は顔色を変えて、唇を痙攣的に震わした。
「尤も、君には前に相当世話になっているから、そう無理も云えない。気にしないがいいよ。……じゃあ、先に失敬する。」
更に侮蔑的な微笑を浮べて、島村は立上った。咄嗟のことで、私達はその後姿を見送るだけだった。
おけいが駆け出していって、表で彼を捉えて、二三言話して、戻ってきた。
「長尾さん、何か気に障ることでも仰言ったの。」
長尾は頭を振った。
「そうでしょう。ひがみよ。」
然し僻みでないことは明かで、彼女自身、云ってしまってから顔を赤めた。
そんなことで、酒の酔いの中に冷い穴があいて、どうにもならなかった。それは一番始末にいけないことだ。長尾と大西とは、賑かに飲み直すんだといって、おけいを誘った。もう十二時近かった。私は最後に残って、餉台にしがみついてる宮崎の相手をしてやった。宮崎よりも、清子の方が酔っていた。しまいにうるさくなったので、一人で帰った。妙なことだが、島村が立去ってから、彼のことが何一つ話に上らなかったことを、私は今になって思い出すのである。