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「しせいさつじんじけん」をひょうす

「刺青殺人事件」を評す

坂口 安吾

「宝石 第四巻第一号」1949(昭和24)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,564 字 · 8 页

青空文庫

見ず知らずの人間に包みを渡すということには、そこにトリックがあること歴然たるもので、姉と妹は、刺青が、腕の半分まである姉、その下の方まである妹、被害者のからだは刺青の部分がきりとられて、残された腕によって被害者が妹では有り得ない。さすれば、包みを渡した意味はそこにあり、トリックがそこにあって、つまり、被害者を姉に見せかけて、実は妹だということが直ちに判明するのである。

あとは蛇足で、それを、もったいぶって書いているから、尚、やりきれないものがある。この犯罪が実際に行われゝば、名探偵が登場する必要はなく、日本の刑事はすぐ謎を解くにきまっていますよ。いわんや将棋などやる必要は毛頭ない。

日本の探偵作家(外国の作家も)たちはやたらと作中に刑事をボンクラに仕立てゝ名探偵を登場させるが、帝銀事件の如く、実際の犯罪は、偶然に行われるから、却々犯人がつかまらないのは当然で、これは刑事の頭が悪いのでもなく、近代捜査法を知らないのでもなく、偶然だから、つかまらないのだ。動機もハッキリしなければ、登場人物も、日本人全部の中から探さゞるを得ないのだから、益々つかまらない。