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「しせいさつじんじけん」をひょうす

「刺青殺人事件」を評す

坂口 安吾

「宝石 第四巻第一号」1949(昭和24)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,564 字 · 8 页

青空文庫

刺青殺人事件のようなトリックなら、日本の刑事はすぐ見破るにきまっている。

然し、この作者は、すぐ見破られるトリックをつかっているから、そこが良いところだとも云える。つまりケレンがないのだ。論理性はあるのだ。やたらと不可能不可解の奇術を弄していない。たゞ、トリックの組み立て方が幼稚だったのである。

たとえば、見ず知らずの人に包みを渡すというあの不自然さが、そもそも、このトリックを幼稚にしており、ハハア、これはクサイ、こゝにトリックの鍵があるな、とすぐ思わせる。

姉と妹の刺青の腕の部分が違うということを、もっと、自然な、さりげない方法で読者に示す工夫が、この小説のヤマなのである。この作者はそこに工夫が足りなかった。そこのところを巧みに提出することに成功すれば、このトリックも、かなり成功するのである。

その写真を被害者の兄に見せると、ビックリ顔色を変える、あそこも、まずい。あそこで、ハッキリしすぎてしまう。こういう際には、写真を見ないうちに、兄を殺させる方がよろしく、すべてトリックは、そういう工夫に細心の注意を要する。

元々探偵小説のトリックというものは、根は、それだけの、ハッキリした、分りきったものだ。