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「しせいさつじんじけん」をひょうす
「刺青殺人事件」を評す
「宝石 第四巻第一号」1949(昭和24)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,564 字 · 8 页
それを裏がえしにして、さりげなく、分らないように、色々と術を弄し策をほどこして、読者に提出して行く、その提出の仕方に、工夫が要るのである。
この作者は、よいトリックをもち、性本来ケレンがなく、論理的な頭を持っているのだが、つまり、読者に提出して行く工夫に、策が足りなかった。そして、文章もまずい。まずいけれども、さのみ不快を与えるほどの文章でもないから、これから筆になれゝば、これで役に立つだけの文章力はある。大切なことは、トリックを裏がえしにして、読者に提出して行く場合の工夫に重々細心の注意を払うことを知ることである。
私は、この作者は、未来があると思っている。ケレンがなく、頭脳が論理的だからである。以後は、横溝君に弟子入りして、テクニックを学ばれるがよい。他の探偵作家はダメである。君の師とするに足る人はいない。みんな頭が論理性を欠いているから、本格探偵小説は書ける筈のない方々だ。
横溝君のも一つ偉いのは、くだらぬ衒学性のないことだ。文章も益々うまくなっている。月刊読売の「ビックリ箱殺人事件」などという珍妙なファルスでも、あれだけの筆力があれば大したもの、獄門島の筆力も次第に冴えている。