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こくこく

刻々

宮本 百合子

「中央公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页

青空文庫

大会が持たれたという事は、しかし何とも云えぬ鼓舞であった。自分が書く筈で書き終えなかった婦人委員会の報告も、して見れば、誰かによってちゃんと書かれているのだ。そう思い、凜としたよろこびに満たされた。外では皆結束して働き、自分の部署は、今此処で正しいわれわれの主張のために闘うところに移されてある。それを貫徹するこそ役割の遂行である。そう、きつく確信をもって感じるのであった。

五月十五日の夕方、三四度ドカドカと大勢して裏階子をかけ上る跫音が留置場まで聞えた。それきり何のこともない。

すると、次の朝、無銭飲食で二十日つけられている髪の毛ののびた雑役が、鉄扉の小さい切り戸から弁当を入れてくれながら、

「犬養がやられた」

と云って去った。――犬養がやられた。……犬養は首相である。何処で? いつ? 反動団体の仕業であるのはすぐ感じられた。味噌汁をついで呉れている間にこちらから訊いた。

「どこで?」

「官邸。……軍人だって」

「ふーむ」

犬養暗殺のニュースは、私に重く、暗く、鋭い情勢を感じさせた。閃光のように、刑務所や警察の留置場で闘っている同志たちのこと、更に知られざる無数の革命的労働者・農民のことが思われた。