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こくこく

刻々

宮本 百合子

「中央公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页

青空文庫

メーデーの後、自分に対する襲撃の焦点が急に変って来た。もう「コップ」のことは問題でなく、今は党へ金を出している、それを云えというのである。自分にそのような事実はない。

中川は、

「だァって、受取った人間がすっかり云ってしまっているんだから君ばっかりがんばったところで仕方がないじゃないか」

また、もう随分長くて体も弱って来たのだから、云うことを早く云って市ケ谷へ行った方がこんな不潔な留置場に押しこまれているよりずっと健康のためにもよい、等云った。自分はよく眠り、体に気をつけてはいるが、膝頭がこの頃ではガクガクして二階の昇り降りが不便なのは事実である。

十二日に、看守が、

「又、君たちの仲間がひっぱられたよ」

と云ったので、何事かと思い不安を感じた。特高で十一日の作家同盟第五回大会が解散された新聞を見せた。

「これじゃ、同盟は全部留置場の内へ引越したようなもんじゃないですか、ハッハッハ」

主任は小気味よさそうに高笑いしている。自分はそのこまかく折目のついた新聞を手にとり、同志川口浩、徳永、橋本、貴司などが引致されたというところを繰かえして読み、これらの人々の闘争を、身近に感じるのであった。