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こくこく

刻々

宮本 百合子

「中央公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页

青空文庫

政策に抗して動揺しているのであった。

果して、昼ごろ髪をきっちり分けた車掌服の若い男が二人入って来た。一人が看守に住所姓名を云っている間に、他の一人がこっちにチラリと流眄をくれ、何か合図をした。女の同志は濡手拭で頬を押えたまま金網へすりついて立っている。新たに来た二人は別々の監房へ入れられた。

「くやしいわ、二人とも×××車庫で、しっかりしてる人だのに」

その日留置場内の人数は割合少く、看守の気も鎮っていた。一緒につかまった男の同志が人馴れた口調で看守に国鉄従業員の勤務状態などを、話しかけている。それにかこつけて、巧に必要な連絡を女の同志に向ってつけているらしい。女の同志はじっとそれに耳を傾け「ふ、あんなこと云ってる」などと頼もしそうに笑った。

夕方、自分が二階へ出された。すると特高の西片というのが、

「ゆうべの女はどうしてますか」

と云った。

「ひどい有様ですよ、朝から何一つ食べられやしない」

「軟いものぐらい買ってやるからって云って下さい。まさか人間様に相すまないからね」

ステッキを口の中へ突込み、あんな負傷をさせたのは、この男なのであった!

留置場へ戻るとすぐ自分は女の同志に、