轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こくこく

刻々

宮本 百合子

「中央公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页

青空文庫

会社がたのんだ。警察は会社のために犬馬の労をとったのだ。――そうでしょう? あの親父さんの本心では、どうして呉れる! と叫んで来たのだ」

それぎり黙りこみ、新聞を読み出した。が、自分の心は深い一点に凝って、暫く動かなかった。

おとといのことだ。朝からいかにも陰気な小雨で、留置場の裡はしめっぽく、よごれたゴザが足の裏へベタベタ吸いつくようだった。雨の日、留置場は濡れた鶏小舎そっくりの感じである。シーンとなっていると、三時頃、呼び出された。矢張りべとつくアンペラ草履で二階へ行くと、高等室とは反対の、畳敷の室へ入れられ、見ると、母親が窓近くの壁にもたれて居心地わるげに坐っている。オリーヴ色の雨合羽が袖だたみにして前においてある。自分を引出して来たスパイは、

「……じゃあ」

と云って、珍らしくさし向いにして室の外へ出た。室の外と云っても、ドアをあけ放したすぐ外のところに立っているのである。自分は坐りながら、

「どうしたの、お天気がわるいのに……」

と云った。母親は、一寸だまっていたが、

「――こんなお天気にとても私は家にじっとしてはいられないよ」

――何年も母親から感じたことのない、そして、そんな優しさのあることは忘れていた暖みがその時湯気のように自分をつつんだ。