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ぜんきてんまやけ
前記天満焼
国枝 史郎
「文芸倶楽部」1927(昭和2)年6月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 页
だろう! 病める者よ、癒されるであろう! ……食を見付けよ! 到る所にあろうぞ! 我に来る者よ、幸福であろうぞ! ……」
東北の方へ進んで行く。次第に人が馳せ集まり、百人、百五十人、二百人となった。
「世の建て直しだ!」と誰か叫んだ。
「焼打ち! 焼打ち! 焼打ちにかけろ!」
ボーッと一所から火が上った。
「浮世を照らせ! 浮世を照らせ!」
火事が見る見る燃え拡がる。
群集を掻き分け狂信者の一団は、東北へ東北へと走って行く。
火事の凄じい紅の光! 青い火が一点縫って行く。お久美の捧げた龕の火だ!
叫声! 悲鳴! 鬨の声! ドンドンドンと破壊の音! それが一つに集まって、ゴーッと巨大な交響楽となる。
一瞬の間に霊岸島は、修羅の巷と一変した。
と、その時、鮫島大学の、屋敷の門がひらかれて、
「さあ方々、出動なされ! 面白い芝居が打てましょうぞ!」
こう叫んだ男がある。他ならぬ鮫島大学であった。
と、ムラムラと出て来たは、大学一味の無頼漢であった。
「火の手は上った! 燃え上った! 役目をしようぞ、風の役目を!」
同じく鮫島大学である。
一団となって東北の方へ、走って行こうとした折柄、漲る暴徒を掻き分けて、こっちへ走って来る人影があった。