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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页
……ところがそれが時代が移って、豊臣氏となり当代となり――即ち徳川氏となってからは、その金を利用した誰もなく、金の埋没地も不明となり、わずかにこの地方秩父地方において『秩父の郡小川村、逸見様庭の桧の根、昔はあったということじゃ……』という、手毬唄に名残をとどめているばかりじゃ。……」
ここまで云って来て要介は、不意に沈黙をしてしまった。
じっと聞いていた浪之助の、緊張の度が加わった。
源女のうたう不可解の歌が、金に関係あるということは、朧気ながらも感じていたが、そんな歴史上の合戦や人物に、深い関係があろうなどとは、夢にも想像しなかったからである。
(これは問題が大きいぞ)
それだけに興味も加わって、固唾を呑むという心持! それでじっと待っていた。
要介は語りついだ。
「あの歌の意味は簡単じゃ。今話した例の金が、武蔵秩父郡小川村の逸見家の庭にある桧の木の根元に、昔は埋めてあったそうさな。――という意味に他ならない。逸見家というのは云う迄もなく、逸見多四郎殿の家の事じゃ。……その逸見家は何者かというに、甲斐源氏の流を汲んだ、武州無双の名家で旧家、甲源一刀流の宗家だが、甲源の文字もそこから来ている。