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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

そこで二人は少なからずテレて、急いで仕度をし出て来たところで、みれば博徒風の三人の男が、若い一人の女を担ぎ、耕地を走って行くところであった。

「この朝まだきに街道端で、女を誘拐すとは不埒千万、藤作殿嚇して取り返しましょうぞ」

「ようがす、やりましょう、途方もねえ奴らだ」

二人は素早く追いついた。

「やい待て待て、こいつらア――ッ」

まず藤作が声を上げた。

「女を誘拐すとは何事だ! ……ヨ――、汝らア高萩の、猪之松身内の八五郎、峯吉!」

「何だ何だ藤作か! チェッ、赤尾の百姓か!」

峯吉が憎さげにそう叫んだ、

「百姓とは何だ、溝鼠。……杉さん、こいつらア猪之松の乾兒で……」

それ以前から杉浪之助は、担がれている女へ眼をつけたが、姿こそ旅装で変わってはいたが、いつぞやの夜、本郷の屋敷町で、危難を秋山要介と共に、救ってやった鴫澤家の娘、澄江であることに気がついた。

「やあ汝ら!」と浪之助は叫んだ。

「その女は拙者の知人、汝らに担がれ行くような、不束のある身分の者ではない。……放せ! 置け! 汝等消えろ!」

「何を三ピン」と八五郎は怒鳴った。

「どこの二本差か知らねえが、俺らの獲物を横から来て、持って行こうとは気が強えや! ……問答は無益だ叩きのめせ!」