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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

正気でないと云ったところで、直ぐに死ぬような気遣いはない。……林蔵と猪之松との果し合い、これは一刻を争わなければならない。よしそっちへ行くことにしよう。……が、しかし念のために……)

そこで要介はまたも大音に、薮に向かって声をかけた。

「源女殿、要介お迎えに参った。どこへもおいでなさるなよ! ……」

14

街道では林蔵と猪之松とが、遠巻きに見物の群を置き、どちらも負けられない侠客と侠客との試合それも真剣の果し合いの、白刃を互いに構えていた。

かなり時間は経過していたが、わずか二太刀合わせたばかりで、おおよそ二間を距てた距離で、相正眼に脇差をつけ、睨み合っているばかりであった。

猪之松には乾兒や水品陣十郎の間に、何か事件が起こったらしく、耕地で右往左往したり、逃げる奴倒れる奴、そういう行動が感ぜられたが、訊ねることも見ることもできず、あつかうこともできなかった。傍目一つしようものなら、その間に林蔵に切り込まれるからであった。

林蔵といえどもそうであった、乾兒の藤作の声がしたり、杉浪之助の声がして、何か騒動を起こしているようであったが、どうすることも出来なかった。