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『りゅうせいがしゅうおよびげいじゅつかん』について
『劉生画集及芸術観』について
和辻 哲郎
「中央美術」1921(大正10)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,678 字 · 10 页
である。その「内なる美」、「精神」が、線と色とをもってする表現手段によって現わされずに、――あるいはこの表現手段によって現わされ得ないものを持つゆえに、――概念と論理とをもってする他の表現手段によって現わされたとき、そこにこれらの思想が生まれたのである。だから我々はこれを、君の画と並んで存在する精神の表現と見なければならぬ。その意味でここには一人の画家の、画によって直接には現わされ得ないさまざまの優れた感情、信念、洞察などが伺われる。それは人としての岸田君の切実な内生を示すものである。が、同時にまた我々はこれを、製作家の書いた美学上の論文として、すなわち「製作の心理」を明らかにし得る可能の最も多い論文として、取り扱うこともできる。この意味でも自分はこれらの論文が深い暗示に富んだ価値の高いものであることを感ずる。それは美学者にとってよき反省の機会を与えるとともに、美術家にとっても力強い教示となるであろう。
岸田君の暗示に富んだ無数の観察を一々紹介することは容易でない。が、美術家としての岸田君の理想・信念は、君の生活の根本の力であり、また美術家にとって最も重要な問題であるゆえに、まずそれを取り上げてみようと思う。