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べんきょうき
勉強記
「文体 第二巻第五号(五月増大号)」1939(昭和14)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,952 字 · 36 页
実に、暗い。なにかしら、荒涼として、人肉の市にさまようような切なさであった。不自然で、陰惨だった。
按吉は、時々、お天気のいい日、臍下丹田に力をいれて、充分覚悟をかためた上で、高僧を訪ねることが、稀にはあった。坊主は人の頭を遠慮なくぶん殴るという話で、三十棒といったりして、ひとつふたつと違うから、出発に際して、充分に覚悟をきめる必要などがあったのである。天日ためにくらし、とはこの時のことで、良く晴れた日を選んで出ても、道中は実にくらく、せつなかった。けれども流石に高僧たちは、按吉のような書生にも、大概気楽に会ってくれたし、会ってみれば、実に気軽にうちとけて、道中の不安などは雲散霧消が常だった。そうして、各の高僧達は、各の悟りの法悦をきかせてくれた。けれども、ここでも、やっぱり人肉の市をさまようような切なさだけは、教室の中と変りがなかった。
こういう立派な高僧方にお会いすると、どういうわけだか、人間とか、心とか、そういうものを感じる前に、いきなり肉体を感じてしまう。この世には温顔という言葉があるが、その実際が知りたかったら、高僧にお会いするのが第一である。