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かたずば
勝ずば
岡本 かの子
「新女苑」1937(昭和12)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,991 字 · 15 页
不断優しい多可子が突然の驚きと、政枝を救いたい一心とで絞り出した癇高な鋭い声が、逆上した政枝の耳にも強く響いた。政枝は自分で自由にならないほど硬直した頸をやっと捻じ向けて、叔母の顔を恨めしそうに見上げた。それを見ると多可子は更に勢づいて、
「さあ、早く先生のお手当を受けるんです」
とせき立てた。
政枝の舌はもつれて硬ばっていた。
「どうせ癒らない病気――死なせて――邪魔しないで……」
政枝はやっとこれだけ云うとまたしても父親の手から自分の左手首を引き離そうともがき始めた。多可子は政枝が自分の病気を死病だと思い決めている以上、それに逆らって説き伏せることは無理だと覚った。そして別な言葉でするどく叱った。
「たとえ癒らない病気に罹っても、生きられる限りは生きなければならないのですよ」
不断、無口でおとなしかった政枝は却ってこの叱咤に対して別人のように反撥した。
「何故、生きなければならないの。そのわけを云って――。それが判るまで手当受けません」
多可子はぐっと言葉に詰まった。でも、ぐずぐずしているうちに政枝の手首から多量の血が流れ出て仕舞う。多可子は焦った。