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かたずば
勝ずば
岡本 かの子
「新女苑」1937(昭和12)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,991 字 · 15 页
「ええ、理由がありますとも。でも、今はあんたが亢奮し過ぎてるから、あとで落ち着いたとき、ゆっくり話す、ね。だから手当だけを受けなさい」
政枝はまだ不承知らしい顔をしていたが、「きっとですか」と多可子を瞠んで念を押した。そして間もなくぐったりして父親や医師のするままになり、やがて素直に体を横にされた。
看護婦がゴム管で政枝の腕を緊めて血止めをすると、医師は急いで傷口の縫い合せにとりかかった。流石に痛いとみえて政枝は一針毎に体をびくっと痙攣させたが、みんなの手前、意地を張ってか声一つ出さなかった。多可子は声も立てないで痙攣する政枝の悲惨な姿を見ていられなかった。少し離れた畳の上にうずくまると、隣町から駈け続けて来た自分の息切れを、やっとこの時急に感じ出して喘いだ。
喘ぎながら多可子は、僅か十四の政枝が思いつめた死の決意を考えてみ、それを飜えさせるだけの立派な理由を見出そうと努めた。しかし、病が癒らないものだという仮定の下に於ては却々簡単に少女を納得させる「人間がどうしても生きなければならぬ」理由なぞ、考え出せなかった。そうなると多可子は咄嗟の場合だから仕方がなかったとは云え、さっき政枝に云った余りにも自信ありげな自分の極言を顧みて途方にくれてしまった。