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じゅうはちじのおんがくよく

十八時の音楽浴

海野 十三

海野十三『十八時の音楽浴』。同一底本的分册已合并为一书。收入:十八時の音楽浴、ある宇宙塵の秘密、第五氷河期、軍用鮫、生きている腸、放送された遺言、千年後の世界、特許多腕人間方式、宇宙女囚第一号。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,941 字 · 210 页

青空文庫

封筒の中には、手の切れそうな百円紙幣が一枚、入っていた。

ああ、一金一百円也。

夢ではない。そして客の依頼は、冗談ではなかったのだ。

近頃めずらしく、大金が入ったので、余は、もう何にも考える気持になれなくなった。事務所を閉めて家路へ急ぐ。

2

×月×日 晴。

午前十時、田村町事務所へ出勤。

きょうは、いよいよ、依頼者田方堂十郎氏のために、三本腕の発明の明細書を書く決心であった。

机に向かって、ペンを取ったが、どうも気が落着かない。きのう懐に入った百円紙幣が、服を通して、はっきり輝いているような気がして、恥かしい。それに給仕の高木がそれを察して、背後の席で、にやにや笑っているように思えて、さらに落着けない。

「おい高木。これをやるから、映画でも見て来い。見てしまったら、あとは帰ってもいいぞ」

高木を追払ってしまうと、余は、事務所の入口に、内側から鍵をかけた。もうこれで、誰も邪魔をしないであろう。余は、そこで百円紙幣を出して、机の上に置いた。この百円紙幣と、話をしながら、依頼の件について出願用の明細書を書こうというのであった。

「本願の、発表の名称は、どうしますかね」