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『じゅうはちじのおんがくよく』のさくしゃのことば
『十八時の音楽浴』の作者の言葉
海野 十三
「十八時の音楽浴」1939(昭和14)年5月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,122 字 · 7 页
この書は、僕の科学小説集の第三冊目にあたる。
この前、同じ版元から『地球盗難』を刊行したが、これは意外に好評であった。この『地球盗難』はその後、三夜連続のラジオドラマとして放送され、更に好評を博した。それでいよいよ待望の科学小説時代が来たらしいと思ったわけであったが、途端に日中戦争が始まり、出版界は大動揺を来たした。読書界も、急に落着を失い、或いは方向転換をしたり、或いは廃刊や出版止があったりして、それ等のことはどっちかいうと意味なく騒ぎを惹きおこし、そして拡大した。戦争前、今こそ科学小説時代が約束されたと僕が思ったのもほんの束の間のことで、編集者の狼狽でもって、意味もなく、この約束もどこかにけし飛んでしまったというような形だった。
僕にいわせるなら、あのとき科学小説時代の約束が反古になるべき何等本質上の理由はなかったと思う。いやむしろ、本質的には、あのとき科学小説が一段と栄えてしかるべきであったと思う。渡洋爆撃への驚嘆、快速戦車部隊への刮目、敵の空襲や迫撃砲や機関銃に対する悲憤、それからまた軍需品製造への緊張、科学戦時代を迎えて青少年といわず老幼男女を問わず国民全体を科学教育することへの逼迫などと、あらゆる材料が読書界を科学小説時代へ持ってゆくための好条件であったのだ。