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ちよこ(さん)
千世子(三)
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,906 字 · 54 页
私達には到底分らないものがねえ。
千世子は午後になってから自分でも変だと思うっ位気分がよくなった。
その日まで着て居た着物をぬいでしっとりと折目のついたのに着かえた。
細っこい胴に巻きつく伊達巻のサヤサヤと云う気軽な音をききながら、
木の深い森へ行きとうござんすねえ。
すぐそこの――ほら、
先に行きましたっけねえ、
あすこへ行きましょうよ、
どんなにいいでしょうねえ。
千世子はそんな事を云いながらわきに絵筆をかんで居た京子をつっついた。
「あしたっからまた一週間寝たけりゃあ行きましょうさ。
とりすましたどこまでも千世子の保護者だと云う様な調子に云った。
千世子はそれなりだまった。
床の上に座って白い鳩の舞うのを見て居た千世子は小声に思い出す歌をつづけざまにうたった。
そして晴ればれした安心した気持になった。
「ねえお京さん私もうすっかり治ったらしゅうござんすよ。
そりゃあ頭が軽くていい気持だ。
「貴方なんか治ったと思ったら一分とたたないうちに治っちまいましょうよ、
自分で病気を作るんだもの。
起きて居たいんでしょう。
「でも少し頭がフラフラする。
「そんならまだ良くないんじゃありませんか、