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ちよこ(さん)
千世子(三)
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,906 字 · 54 页
「どうしたって十二時だもの。
それで六時がなれば起きるんだから寝不足で黄色な顔をして居なけりゃあならないのは無理もない。
「それじゃあ日本人の先祖はよっぽど寝不足ばっかりしつづけたものと見える。
貧亡ひまなしで――
こんな事を云って笑いながら千世子は京子にかす本を抱えながら送って行くつもりで一緒に門を出た。
外は星夜の深い闇がいっぱいに拡がってどっかで下手な浪花節をうなって居るのが聞えて来た。
千世子の草履の音と京子の日和のいきな響が入りまじっていかにも女が歩くらしい音をたて時々思い出した様に又ははじけた様に笑う声が桜の梢に消えて行った。
京子のつつましやかな門の前に来た時千世子はいかにもとっつけた様に、ポックリ頭を下げて、
左様なら
今度、暇があったら又ね、
一人で帰るのがいやだ!
と云うとすぐ京子が何か云ったのを後にきいて大股にスッスッと歩いた。
少し行って後を振返った時京子がまだ立って居るのを見て前よりも一層速足に歩き出した。
広い屋敷町の道の両端にひそんで居る闇がどうっと押しよせて来る様に感じ三間ほどの長さに四尺ほどの高さにつまれて居る「じゃり」