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ちよこ(さん)
千世子(三)
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,906 字 · 54 页
は瓦斯の光でひやっこく光って闇におぼれて死んだ人の塚の様に見えて居た。追われる様にして家に帰って机の前に座った時その上に葉書と手紙がのって居るのを見つけた。
叔母からよこした手紙にはこの次の日曜に御馳走をしてやるから来いと云うだけの用にいろいろのお飾りをつけてくどくどと巻紙半本も書いたかと思うほど長く書いてあった。
よっぽどの時間と根気がなけりゃあ。
千世子は叔母のひらったい顔と小っぽけな額を思い出した。
そしていかにも感謝の念にあふれた様な返事を書いて心の中に朗読しながら何とはなしの可笑しさに笑って居た。
葉書は、友達からカナリーが雛を育てたからあげようと云ってよこした。
育てるのは若しかすると楽しみかもしれないけれど、病気になった時やそのほかの面倒くさい事を考えるともらう気もしなかった。
千世子は床に入ってからも中々ねつかれなかった。
子供の時から幾人も変った友達の事を思い出したりして自分一人はなれたものの様にも思った。
自分一人多くの人の群からはなれたと云うのも必して不愉快なはなれ方ではなかった。
小さい時分からあくせくして友達を求め様としなかった千世子は今もあんまり沢山な友達を持っては居なかった。