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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页
「じゃあ超人ね」
「超人――超人という程でもないが……」
「ねえ先生」
春部が改まった口調で呼びかけた。
「はい」
「わたくし、何だか前から気になっていたんですが、古神子爵というのは本当の御苗字ですの」
「フルカミが本当の苗字かとお訊きになるんですね。いやあれは本当ですよ。高等学校でも……その前の中学校でも彼は古神行基でしたからね。なぜです、そんなことを気にするのは」
「だって、あまり沢山ない御苗字ですもの」
「殿様の末裔ですからね、殿様にはめずらしい苗字の人が多い」
「じゃあ、あの田鶴子さんの苗字の四方木というのはどうでしょうか。あれこそ変った苗字ですわね」
「そうでしょうか。……尤も昔あの女は、自分の苗字を四方木とは書かず、蓬と書いていました、つまり草のヨモギですね。しかし私が知って間もなく四方木と書くようになりました。……そうそう思い出したぞ」と帆村はそこで急ににやっと笑顔になり「四方木と書かせるようにしたのは、あの古神だったのですよ。そのことは、何の時だったか、田鶴子が客の一人に上機嫌でお喋りをしているのを私は傍で聞いた覚えがあります。しかももう一つ話があるのですよ。