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せんりがんそのた

千里眼その他

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」1943(昭和18)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,478 字 · 26 页

青空文庫

それで誰も本気でこの問題をとり上げた人はなかった。それが珍奇を喜び、何事にあれ着実真摯な道を煙たがりやすい世間には、大変評判が悪かったらしい。

現代の日本の物理実験学を建てられた中村清二博士の「理学者の見たる千里眼問題」によると、先生たちは先ず「迂遠なる学者」と言われ、ついで事件が念写にまで発展した頃は「頑冥なる学者」とされたということである。そして最後にこの事件は、御船千鶴子の自殺、長尾郁子の急死という破局に到って暗転したのであるが、その一段落ついたところで、従来の経緯を明かにされた時には、「余りにしつこいではないか」という世評を受けられたそうである。

物理学者たちの消極的反対にもかかわらず、千里眼の方は益々流行を極め、「天下その真偽に惑い奸催眠術者の徒忽ちに跋扈を極め迷信を助長し暴利を貪り思想界を擾る」という状態にまでなったのである。後から考えてみればまるで悪夢のような話であるが、実際にあったことである。それは正しく流行性の熱病であった。

この一節は、千里眼の真偽如何について厳密なる科学的裁断を下すべく、丸亀市の長尾家における山川健次郎先生の実験に万般の援助をされた藤、藤原両先生の『千里眼実験録』