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せんりがんそのた
千里眼その他
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1943(昭和18)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,478 字 · 26 页
の序文の一節である。この書などは現在では到底手に入らぬものであろうが、この種の実験報告としては、細心精到かつ典雅を極めたものである。
細心精到なる所以は、初めから千里眼を否定することはせず、もしこの現象の中に幾分でも物理学的要素があった場合にはその性質を吟味すべく、二十三種の実験五十余種の材料を携行されたことにもうかがえるであろう。典雅というのはこういう場合には可笑しな言葉であるが、この実験の困難は実は人事的方面にあったのである。その一つはこの現象が大部分精神的なものである以上、先方が精神状態を乱すからと言われればそれまでである。それで先方の条件は十分容れて実験しなければならない。その条件が実は手品または詐欺の挿入し得る条件だったのであるが、それだといって実験を打ち切れば、結局水掛論に終り、火は益々燃え上るばかりである。今一つは、これは想像であるが、長尾夫人の御主人が、現職の判事であったことも、この事件のかげに揺曳している或種の雰囲気を思わすのである。そういういわば人事的な瑣事は科学の研究の前には問題とするに足らないというのは、科学がまだ十分に身についていない人の言うことである。