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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

盲人とは暴言である。出てゆく態度も無礼であった。菊枝夫人は感情を害したであろうか? 否そうではないらしい。

夫婦の情というやつは微妙なもので、このばあい自分がけなされたことなど、彼女にとっては問題ではなかったようだ。

「奥が会いたいと云っておるぞ」

翌日の朝、半之助が出勤するとすぐ図書助が渋い顔つきでそう云った。半之助はむっとふくれてそっぽを向き、さようですか、答えたまま動かなかった。

「どうした、ゆかんのか」

図書助は暫くしてこう促した。

「ええまいりません、御免蒙ります」

彼はにべもなく答え、それから口の中で独り言のように、なんだ女なんぞ……と呟やいた。

城代はどこかしら痒いような表情で、横眼にちらちらと彼を見た。なにか云いたそうでしかし云いかねるらしい。やがて苛々しはじめ、ふいに立ちあがって、

「釣にまいる、六兵衛に支度を命じて呉れ」

と叱りつけるように云った。

六兵衛とは家扶和田六兵衛のことで、支度というのを見ると釣竿らしい長い包のほかに、小さな葛籠ほどもある風呂敷包が二つもあった。半之助はこれを持たされるのかとうんざりしたようだが、それは下僕が二人で背負った。