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はんのすけしゅうげん
半之助祝言
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页
夫人は吃驚して、「――うちにはむすめは一人きりですわ」
「はあそうですか、お一人、……本当ですか」
「まあいやだ、どうしてそんなことを仰しゃいますの」
「それがあれなんです」
半之助は冷やかに笙子嬢を眺めた。
「その、江戸でもよく聞いたんですが、お宅にはその、絶世の美人というくらいきれいなお嬢さんがいらっしゃる、眼のさめるようなお嬢さんだなどというもんですから、……しかし世間の評判などは実にでたらめで」
云いかけて、半之助は口をつぐんだ。
令嬢が怒ったのである。すばらしく怒って、まなじりを吃とつりあげ、殆ど座を蹴たてるようにして、この部屋から出ていった。半之助はとぼけた顔でわけがわからないというように夫人を見た。
「どうしたんでしょう、なにかお気に障ったんでしょうか」
「もちろんですよ」夫人は呆れてこの無作法者を睨んだ。
「――あれではまるで笙子が美しくないようじゃございませんか、貴方にはあのひとがきれいにはおみえにならないんですか」
「いや、心配なさらなくともいいですよ、絶世の美人なんてやはり頭が悪いにきまってますからね」彼は夫人を慰めるように、やさしく云った。