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しょうせつかたらんとするせいねんにあたう
半自叙伝
菊池 寛
菊池寛『半自叙伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:小説家たらんとする青年に与う、私の日常道徳、志賀直哉氏の作品。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,766 字 · 19 页
氏は、この数行において、多くを描いていない。しかも、この数行において、淋しい湖畔における夫婦者の静寂な生活が、如何にも溌剌として描き出されている。何という簡潔な力強い表現であろう。こうした立派な表現は、氏の作品を探せば何処にでもあるが、もう一つ「城の崎にて」から例を引いて見よう。
「自分は別にいもりを狙はなかつた。ねらつても迚も当らない程、ねらつて投げる事の下手な自分はそれが当る事などは全く考へなかつた。石はコツといつてから流れに落ちた。石の音と共に同時にいもりは四寸程横へ飛んだやうに見えた。いもりは尻尾を反らして高く上げた。自分はどうしたのかしら、と思つて居た。最初石が当つたとは思はなかつた。いもりの反らした尾が自然に静かに下りて来た。するとひぢを張つたやうに、傾斜にたへて前へついてゐた両の前足の指が内へまくれ込むと、いもりは力なく前へのめつてしまつた。尾は全く石へついた。もう動かない。いもりは死んで了つた。自分は飛んだ事をしたと思つた。虫を殺す事をよくする自分であるが、その気が全くないのに殺して了つたのは自分に妙ないやな気をさした。」
殺されたいもりと、いもりを殺した心持とが、完璧と言っても偽ではない程本当に表現されている。