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まんじ

卍

谷崎 潤一郎

「改造」改造社、1928(昭和3)年3月~1929(昭和4)年4月、6月~10月、12月~1930(昭和5)年1月、4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,618 字 · 258 页

青空文庫

「あてとこやっぱりあかんなあ。折角お母ちゃんが姉ちゃん信用してはんのに、下手なことしてしもたら厄介やさかい」いうて、「そうそう、宝塚の新温泉どうやろ?」と、光子さんがいい出しなさって、二人で向い行て家族風呂い這入りながら、「姉ちゃんずるいわ、あての裸ばっかり見せてくれ見せてくれいうて、自分のんちっとも見せん癖に。」「あてずるいことないねんけど、あんたがあんまり白いよって恥かしいねん。あんた、こんな黒い体見ても愛想尽かさんといてなあ」いうたりしましたが、わたしほんとに、自分の肌初めて光子さんに見せた時は、一緒に並ぶのんイヤな気イしました。光子さんは色が飛び切り白いだけでのうて、体の釣合いよう取れてて、姿がすらッとしてなさるのんで、それに比べたら、何や急に自分の体無細工に思われて来て、……「姉ちゃんかって綺麗やないかいな、あてとちっとも変れへんもん」いわれますと、しまいにはそれを真に受けて何とも思わんようになりましたけど、……初めはわたし身がちぢむように感じました。

それであのう、その前の日曜に夫と二人で苺狩に行たことが光子さんの手紙にありますでしょう。