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まんじ
卍
谷崎 潤一郎
「改造」改造社、1928(昭和3)年3月~1929(昭和4)年4月、6月~10月、12月~1930(昭和5)年1月、4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,618 字 · 258 页
いうて、――つまり光子さんは自分でやといいにくいもんですよって、着物着換えてる間にその男が代って話するように、段取りがきまってたらしいのんです。そんでその男、――ああ、そうそう、男はその時「財布を取られてしもたのんで名刺ありませんけれど、僕は船場の徳光さんの店の近所におります綿貫栄次郎いうもんです」いいました。――その綿貫いう男の話聞いてみましたら、その人と光子さんとは、まだ光子さんが船場の方に住んでなさる時分、去年の暮頃から愛し合うようになって結婚の約束までしたいうのんです。ところが今年の春になってMの方との縁談が持ち上って来て、とても二人は結婚出来そうにもないようになったのんですが、それが同性愛の噂のためにええあんばいに破談になった。――まあそういう意味のこというて、しかし決して自分たちは奥様を利用したんと違う、初めは利用したような形になったけど、光子さんはだんだん奥様の情熱に動かされて、自分を愛するよりももっと熱列に奥様愛するようになったよって、自分の方がどれぐらい嫉妬感じたか分れへん、利用しられたとしたら自分の方がしられてるぐらいやいうのんです。