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なんとうたん

南島譚

中島 敦

03 雞

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,935 字 · 18 页

青空文庫

南洋群島島民のための初等学校を公学校というが、或る島の公学校を参観した時のこと、丁度朝礼で新任の一教師の紹介が行われている所にぶつかった。其の新しい先生はまだ如何にも若々しく見えるのだが、既に公学校教育には永年の経験のある人だという。校長の紹介の辞についで其の先生が壇に上り、就任の挨拶をした。

「今日から先生がお前等と勉強することになった。先生はもう長いこと南洋で島民に教えとる。お前等のすることは何から何まで先生にはよう分っとる。先生の前でだけ大人しくして、先生のおらん所で怠けとっても、先生には直ぐ分るぞ。」

一句一句ハッキリと句切り、怒鳴るような大声であった。

「先生をごまかそうと思っても駄目だ。先生は怖いぞ。先生のいうことを良く守れ。いいか。分ったか? 分った者は手を挙げよ!」

凡そボロボロなシャツや簡単着をまとった数百の色の黒い男女生徒が、一斉に手を挙げた。

「よし!」と新任の先生は特に声を大きくして言った。「分ったら、それでよし。先生の話は之で終り!」

一礼の後、数百の島民児童の眼が再び心からなる畏敬の色を浮かべて新しい先生の姿を仰ぎ見た。

畏敬の色を浮かべたのは生徒等ばかりではない。