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なんとうたん
南島譚
03 雞
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,935 字 · 18 页
これも我々に判らぬことはない、などと言えば、世の婦人方から一斉に論難されること請合いだが、しかし、斯うした気持の原型が我々の中に絶対に無いと言う方があれば、それは余りにも心理的な反省に欠けた人に違いない。西班牙領から独逸領になった時、前夜迄の忠実無比な下僕や隣人が忽ちに兇漢と変じて、西班牙人を殺害した。之も又、ラガド市の大学を訪れたガリヴァー程に我々を面喰わせはしないであろう。
所が次の様な場合、我々はそれを一体どう考えたらいいのであろうか。例えば、私が一人の土民の老爺と話をしている。たどたどしい私の土民語ではあるが、兎に角一応は先方にも通じるらしく、元来が愛想のいい彼等のこととて、大して可笑しくもなさそうな事を嬉しそうに笑いながら、老人は頗る上機嫌に見える。暫くして話に漸く油が乗って来たと思われる頃、突然、全く突然、老爺は口を噤む。初め、私は先方が疲れて一息入れているものと考え、静かに相手の答を待つ。しかし、老爺は最早語らぬ。語らぬばかりではない。今迄にこやかだった顔付は急に索然たるものとなり、其の眼も今は私の存在を認めぬものの如くである。何故? 如何なる動機が此の老人をこんな状態に陥れたのか? どんな私の言葉が彼を怒らせたのか? いくら考えて見ても全然見当さえつかない。