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なんとうをおもいて

南嶋を思いて

新村 出

――伊波文学士の『古琉球』に及ぶ――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,941 字 · 14 页

青空文庫

その他両者共にFたるが多く、稀にPたるも存するが、面白く思うのは、前者に花を法拿としてあるを後者に豁那とする如きを始とし、春のハを一は法として他は哈としたり、八月の八を一は法として他は瞎としたような類のFHの対照が認められる。神州方言に於ても法の字はF、他の字はHの頭音を有することは勿論だ。

かくの如く嘉靖または万暦の初年と康煕の初年との間、殆ど百年乃至百五十年のうちにも髣髴として如此の音韻変化の迹がたどられる。されば追々地方的及び時代的の差別が明かに成来って琉球語の研究が経緯されるに至ると、我本土の国語の源流を究める上に大なる裨益をなすことは疑ない。言語以外の方面に於ても普く文献の蒐集攷究を力められると同時に、国語学の上にも益々新資料を供給されることを自分は著者に熱望して止まないのである。

この著述は那覇の沖縄公論社の印刷及発行にかかり、印刷紙質装釘の体裁は立派なものとはいえず、活字の墨付が悪くて読みにくい点もあるが、自分は、かえってかかる質朴なる外見に一種の感興を禁じ得なかった。タイトルページの横文字の如きも、後年になったら琉球木活字版とでも名けてかえって珍重がる人がないではなかろう。