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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

が、人形は黙っている。今度は首を捻ってみた。しかし人形は音を出さない。

「不思議だな、どうしたんだろう? あんなことを猿若は云ったけれど、物なんか云わないのじゃアあるまいかな。人形が物を云うなんて、どう考えたってへんてこだからなあ。でもし物を云わないとすると、弁才坊めが苦心して、唐寺の謎を解き明かせた、研究材料の有場所を、発見することが出来なくなる。困ったことだ、困ったことだ。……ナーニ、ナーニ、そんなことはないさ。どうかしたら物だって云うだろう。もし又物を云わないようなら、人形の腹を立ち割ればいい。そうしたら秘密は解けるだろう。『この人形を大事にしろ』弁才坊めが民弥めに、こんなように云ったというからな。大事な秘密が人形の中に、隠されているのは確からしい。……どっちみち早く帰るとしよう」

五条の橋を渡って行く。

渡り切った所に柳がある。ちょうどそこまで来た時であった。一つの人影が現われた。柳の陰から現われたのである。

「オイどうだったい猪右衛門さん」

その人影が声をかけた。同じ香具師の女親方、猪右衛門と相棒の玄女であった。

「ヨー、これは玄女さんか」

「首尾はどうかと思ってね、ここ迄様子を見に来たのさ。