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なんろ

南路

宮本 百合子

「太陽」1922(大正11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页

青空文庫

けれども、背景にこれ等の忘れ難い印象をもって看るためか、彼等三人が一塊りになり、揺れる座席の間を釣合をとりとり通り過るのを見ると、身辺から、無数の人群と生活とが見徹せるように感じた。

七

二十二日一日を、ニュー・メキシコの一部とアリゾナの砂漠に送り、自分は始めて、砂漠が、如何程微妙な美に満ちているかを知った。

日本にいて砂漠というと、自分はよくゴビの砂漠という、遠い、夢より朧(おぼ)ろな或る場所を想像に浮べた。そこでは、灰色の砂が、波のように蜒(うね)りをうって、地平線の彼方まで続いている。カラバンが通る。人間は頭にタアバンを巻き、駱駝(らくだ)は頸に鈴を鳴らして、白い夕月の淡い空の下を、のろのろと旅行する。オアシスという緑地もある。恐ろしい禿鷹の影も映るそうだ、ということなどを、漫然心のどこかに止めていたのである。

けれども、今、この眼で、たといゴビの砂漠とは異ってもディザアトと呼ぶ場所を見ると、私は、鋭い色調と音楽的な美感に胸を打たれずにはいられない。

巨人仙人掌(ジャイアント・カクタス)の奇怪な叢生が珍しい許りではない。無限の砂地とそこここに聳えるテーブル・ランドが簡勁な線で我々を魅するものでもない。