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ききにおけるりろんてきいしき
危機における理論的意識
三木 清
「改造」1929(昭和4)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,790 字 · 16 页
私が思想の性格の名のうちに数えたところの善悪という概念が道徳的、実践的な概念であることがそれを示している。もしそうであるならば、思想の性格の中には社会の構成そのものが反映されているのでなければならぬ。この社会が階級的構成のものであるとするならば、思想の性格は階級的な言葉であるはずである。社会の階級的構成は支配階級と被支配階級とに分れている。そしてこの支配被支配の関係が思想の性格としての善悪をおのずから定める。換言すれば、支配階級の利益を表現する思想は、思想として、善き思想であり、そして反対に被支配階級に仕える思想は、思想として、悪しき思想である。すなわち、一定の階級の社会上の優越がその階級の思想の性格上の優越を規定する。支配階級の思想が支配思想であるからである。したがってこの階級の社会的位置が安定している限り思想の危機は現われない。思想の危機の出現するのは、社会における階級の間の対立、そして矛盾が尖鋭化し、もはや蔽うべからざるものとなったときである。このとき支配階級は、自己の社会的位置の不安と動揺とを知り、自己にとって悪しき思想の出現を直接に思想の危機として感ぜざるを得ない。