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ゆうじょうにかんけいあるエッセイ

友情に関係あるエッセイ

戸坂 潤

「改造」1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,236 字 · 17 页

青空文庫

――チャールス・ラムは『エリヤのエッセイズ』で、「既婚者の言動についての或る独身者の嘆き」というものを説いている。彼はそこで既婚者が独身者に向って加える凡ゆる非礼を分析し、最後の最も不埓なものとして、女房達が亭主をその親友と絶交させる方針を一貫して採用する、という原則を結論しているのである。狂った不幸な姉を護って独身に終った彼は併し、ここで自分を嘆いているのではなくて既婚者を嘆いているのだということを、読者は忘れてはならぬ。そして嘆く者は嘆かれる者に対して、常に優越した立場に立つことを自覚しているという法則をも忘れてはならぬ。つまり彼は親が放蕩息子を嘆き、教師が劣等生を嘆くように、既婚者を嘆くのである。彼の享受しているものは独身者の不幸ではなくて独身者の特権なのだ。

さて私の一人の親友は、私によって百年後に生きているラムでもあろうと、ひそかに想定されている処の、人に知られた人物である。彼はその独身者としての特権を充分長期に亘って有効に行使して私達既婚者を苦しめて来た。処がどうだろう。そのラム氏が最近の一二年の内に、急に結婚して了ったのである。それによって彼もまた私達同様のただの人になり終ったことは、惜んでもあまりあることだ。