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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

」

周平はただ低くお辞儀をした。言葉の調子や様子などからいい印象を受けた。それでも、何とか云おうとしたがその言葉が喉につかえて出なかった。横の方に黙って坐ってる隆吉へ眼をやると、隆吉は微笑みながら彼を見返した。

「毎週わざわざ来て頂くのは大変でございますね。」と定子は云った。

「いいえ、どうせ遊んでるのですから。」

そして周平は次の言葉を待った。しかし定子はもう何とも云わなかった。保子から話しかけられて、それに簡単な受け答えをしていた。周平はその顔をそっと窺った。染めたらしい黒い髪を小さく後ろへ取上げて、広い額を見せていた。少し凹んだ小さな眼、真直な鼻、長い※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)、それらが隆吉によく似ていた。小鼻のわきから頬へかけた筋のために、顴骨が少し高まって見えたが、それも額と※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)とによく調和して、却ってしっかりした上品な趣を添えていた。そういう顔立を彼女は少しもくずさずに、微笑さえも殆んど浮べないで、保子へ短い言葉を返していた。保子一人でいろんなことを話した。周平と隆吉とは、置き忘れられたように黙って坐っていた。