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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
」と周平は云い出した。
「ああ」と村田は答えて、俄に思い出したように、銚子の底に残っている冷たい酒を貪り飲んだ。
外に出ると、綺麗に晴れた空をごく低く、薄白い雲が千切れ飛んでいた。雲の間から冴えた月が覗いていた。月の面を仰ぐと、湿っぽい冷かな風がさっと頬を撫でて、ぽつり……ぽつり……と、名残りの雨が落ちかかった。
村田はふーっと酒臭い息を吐いて云った。
「いい晩だね。」
それから二三十歩した後、彼は突然周平の方を振り向いた。
「君、吉川さんの話を余り気にかけちゃいけないぜ。」
「なぜ?」
「なぜってもう過ぎ去ったことじゃないか。それに、君は余りつまらないことにこだわり過ぎる傾きがあっていけない。こだわった揚句には、とんだ尻尾を出す危険がある。兎に角ああいう話を僕や君が詳しく知ってるということは、横田さん達にとって快いことではあるまいと思うんだ。」
電車通りに沿って暫く進んだ後、周平の下宿の方へ行く曲り角で、二人に立ち止った。
「君はこれから下宿へ帰るのか。」と村田は尋ねた。
「ああ。」と周平は答えた。
村田はその顔をじっと眺めていたが、ふいに、「じゃあこれで失敬しよう、」