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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
と云い捨てて立去っていった。
周平は一人薄暗い街路に残された。
七
一人になって初めて周平は、先刻の村田の話からひどく心を動かされてることに、自ら気づいた。酒の酔から来る興奮も手伝っていた。感傷的な悲壮な気分のうちに浸っていた。
彼は下宿の方へ帰って行かずに、ただぼんやり歩き出した。雨は全く霽れていた。冷かな風が月の光を運んできた。彼は月を仰ぎ仰ぎ歩いていたが、やがて静かな横町へ曲り込むと、いつしか首垂れて考え込んだ。
彼は、横田夫婦と隆吉とのことを考えていた。彼等の運命にまつわってる陰影のことを考えていた。話は数年前のことであったが、未来長く尾を引くもののように感じられた。その上、村田の話に洩れた何かが、より重大な何かが、実際にはあったのではないかという気がした。彼は暗い方へ暗い方へと想像を向けていった。殊に保子に就てそうだった。彼女が深い傷を心に負って、一人ひそかに苦しんでいる、そういう風に想像したかった。吉川の死が自殺の死であって、而も直接に保子と何等かの関係がある、そういう風に想像したかった。そして、この想像が自分の心に甘えていることを、周平は意識した。