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おじ

叔父

豊島 与志雄

「改造」1925(大正14)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,585 字 · 24 页

青空文庫

彼女はやはり、その長い揉上の毛とすっと刷いた眉毛とそれにふさわしい眼とで、美しさに変りはなかった。――笹部は、一寸見たところごく整った顔立だった。がその顔立から、眼も鼻も口も平凡に恰好よく並んでいながら、よく見てると一種の醜い感じが浮出してきた。どこが醜いといって捉えどころのない、云わば、特徴のない凡俗さとでもいうような醜さだった。それから、身体の割合に手首から先が妙に大きくて、手指も長すぎるようだった。いや手全体が長すぎるようでもあった。その手を彼は時々頭の方へあげて、薄い感じのする柔かな長い頭髪をかき上げた。

「若いうちは少しは冒険も面白いよ。まあいろいろなことをやっているうちには、落付くところへ落付くだろうから。」と中野さんは云った。

「いいえそんな……。」と云いかけて笹部はひどく真面目な顔付をした。「真剣な途を進んでるつもりでおります。」

「それもいい。」そして中野さんは話を外らした。「喜代子、お前から海の方へ手紙を貰ってね、返事を上げようとすると、処番地が書いてないだろう。なるほどなと思ったね。」

「なるほどって……どうして。」

「どうしてでもないが……やはり、なるほどさ……。