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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
然し、若年の彼の及びそうもない消極的な持堪えが相手にあった。
喉の渇きが激しくなり、粘りこい膏汗が滲み出すにつれ、スーラーブは、少し焦り始めた。彼は、渾身の力を振搾り、相手を上手投にかけようとした。イランの戦士は、うんと足を踏張って堪え、逆に、スーラーブの脚を掬おうとする。それを脱して体を持なおそうとする拍子に、ほんのちょっとではあるが、スーラーブの右手が浮いた。危いと見る間に、イランの戦士は老巧な腰のひねりでぐっと右をさした。スーラーブの体は、対手ともろに今にも倒れんばかりに平均を失った。処で、彼の若さが、彼を助けた。撓み撓んでもうちょっとという刹那、彼は、どうしたか自分でも判らない身のこなしで宙に躯をたてなおすと虚を衝いて、いきなり厭というほど対手の左脚を前方に引張った。既に平衡を失していたイランの戦士の巨きな躯は、地響きを立て、仰向に倒れた。スーラーブは、飛びついてその胸に跨り、ぎっしり両膝でしめつけた。一度、二度、脚を蹶上(けあ)げて、イランの戦士は起きかえろうとした。が、それが無駄と知れると、彼は思いきりよく、※(もが)くのをやめた。
スーラーブは、はっ、はっと、喘ぎながら、対手の顔を瞰下した。