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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
武具をつけたまま、兜だけをとったギーウが大股に数間あとからその姿を追っていた。燃き始められた篝火の間に黒く、見え、隠れするルスタムの後姿には明かに或る感情が表れていた。苦しい、激しい、暗い感動を、やっと意志で制し、威厳の裡に封じ込めているように、肩つきや頸が硬ばって見えた。脚ばかりは、その制御を受けきれないように、荒く不規則に、夜の地面を踏んで行く。ギーウは、もう少しで天幕に入るというところでルスタムに追いついた。彼は、黙って近よりさま、ルスタムのやや前かがみな、厚い肩に手をかけた。ルスタムは、ぎょっとしたようにふりはらうと肩を捩(ねじ)りながら、顔を向けて後を見た。ギーウと知ると彼は、止り、太い太い吐息をついた。ギーウは、ルスタムに顔を近づけた。「入ってもよいか?」
ルスタムはギーウを見たが、目を逸し、暫く考え、
「待ってくれ」彼は歩き出して云った。
「後で迎えをやる」ギーウは、ルスタムの肩を一二度軽く叩いたまま引きかえした。
ルスタムは、のろのろ自分の天幕に入った。そして、殆ど機械的に甲冑をぬぎすてると、どっかり腰架に腰を卸した。侍僕が用意していた祝辞を、ルスタムの顔つきで阻まれ、訝かしげに眼の隅で偸見ながら、跫音も立てず酒盃や瓶や、乾果、その他を卓に並べた。