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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
彼は、自分を憫笑するような心持と、切って落された幕の彼方から出て来たものを、猶確かり見定めようとする心持とで、愈々考えを集注した。
「兵力を以て、イランに侵入するということは、いずれ、何時かは、アフラシャブに強制されてでもしなければならないことではないか。怯懦の癖に、野心は捨てることを知らない彼は、これ迄の失敗にこりて、ルスタムのいる間こそ、手を控えていよう。一旦、イランの守りがなくなったら、自分の命が明日に迫っていても、そのままに済さないのはわかっている。その時自分は、否応なしに、戟(ほこ)をとらせられる――然し、父のない後のイランが自分にとって何だ。アフラシャブの道具になって、命をすて、イランを侵略する位なら今、父上のおられる時、自分から動きかけ、機先を制して、その父に会いたさで燃える心を、戦士として、最もよく役立てるのは、当然すぎるほど当然ではないか」
スーラーブは、解(ほ)ぐれ、展開して来る考えに乗移られたように、我知らず、暗い歩廊を歩き始めた。
「ツランから侵入したといえば、王は、必ずルスタムを出動させるだろう。……よいことがある、自分は、ツランの主将として、イランの主将に一騎打を挑む。