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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

命令を受けた男が何処へか去るとすぐ、一人の兵卒が、手綱で二匹の乗馬を牽いて現れた。兜の男と赤い羽毛飾をつけた男とが、ひらりとそれに跨った。

彼等は暫くの間、並足で高地の端に沿って騎って行ったが、一寸、物かげに隠れると、今度は別な方から、小刻な※で出て来た。ルスタムは、二三遍、馬の背で調子よく揺れる兜の煌く頂が、見えたり隠れたりするのを追った。けれどもふと、一つ向きが更わると、そのまま二人とも高地の奥へ見えなくなってしまった。

ルスタムは、急に索然とした失望を感じた。それでも、今来るか、今来るかと思いながら、彼は永い間、其処から動かなかった。

騎士等は、きっと何処か別な、彼に見えない処で降りてでもしまったのだろう。

ルスタムは、余程経ってから、のろのろ、何かに気を奪われている風で馬の頭を立てなおした。陣地と定った場所では、兵等が罵り合い右往左往して、幕営の準備をしていた。ルスタムは、混雑した荷騾馬の群の横や、地面に積上げられた食糧の大袋の山をよけ、彼方の天幕に戻った。

その晩イラン方では、戦捷の前祝に簡単な祝宴が催された。大きな燎火が、澄んだ曠原の夜の空を一部分ボーッと焦している下で、兵卒等はぐるりと幾つもの円い輪に坐り、てんでに果物酒と堅焼煎餅とを前に置いて、喋り、笑い、或る者は、歌を謡った。