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こきんしゅうまきのご
古今集巻之五
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1958(昭和33)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 页
「もういい」と主計が遮った。
「わたくし、くやしゅうございます」と云ってたみははげしく泣きだした。
「もういい、泣くな」と主計が云った、「杉江は病気で急死、ということに相談がきまった、自殺したということを人に知られてはならない、これだけは固く守ってくれ、いいか」
「はい」とたみは頷いた。
「食事のことはあとで知らせる、ここはいいからさがっておいで」
たみが去り、まもなく五郎太と柳田良庵が来た。二人で死躰をきれいにしたそうで、良庵は小さな包を持って、五郎太は短刀を主計に渡しながら、これは膏でくもっているから、研ぎにだして怪しまれるといけない、どこかへしまっておくほうがよかろうと云った。良庵は若い町医で、蘭法を修業したということだが、「心臓の故障で吐血し、そのまま急死ということにする」と云った。包の中には死躰を拭いた晒木綿がある、それで吐血を始末したといえばよかろう。よければ親族の集まるまで自分は残っている、と云った。
杉江の病死は疑われることなく、二日めに葬儀がおこなわれた。実家からは吉原市郎兵衛夫妻と、弟の市三郎、妹の松江が来、また、志田へ嫁している姉の直江も、良人と二人で来、自分は手伝いのためあとに残った。